番屋に帰るとやたらと猫が多い。老人に聞いてみる「爺さん。なんでこんなに猫が多いんだ?」老人「ねずみから網を守るためだ」老人もこの猫たちを世話することで少しは寂しさも紛れていたようだ。「爺さん、今の一番の楽しみは?」老人「流氷が去ってここに漁師が戻ってきた頃、ここを無事に明け渡し町に帰ることだ。」「じゃあまだまだあるけど頑張ってくれ。爺さん」「私のことより頑張るのはお前たちのほうだ。」こんなやりとりの後、知床半島の西海岸の危険なところなどを老人に教えてもらい、明日の出発に備えた。その晩二人は老人にお世話になったと砂糖と切り餅をお礼に預けた。
出発の日、いつもどおり荷物を背負って進んでは下ろし、また戻りまた荷物を背負って進む。そして最後の荷物になったとき老人が言う。「食べていけ」。お汁粉を出してくれた。それは二人が渡した砂糖と切り餅で作ったものだった。この二人が訪れてから惜しげもなく限りある食料を与え、そして二人がお礼にと渡した砂糖と切り餅までもがお汁粉に変わり二人の目の前にある。老人は「最後に・・」とそのお汁粉を二人に出してくれた。二人はお汁粉よりも暖かい老人の優しさを感じながら両手を合わせる気持ちでお汁粉を腹いっぱい食べた。
「じゃあ、爺さん行くよ。」二人は出発した。老人は見えなくなるまで二人に手を振っていた。川端氏はこう言う「今でも流氷が来ると老人に手を合わせる気持ちになる・・」と。
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